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香港:ジミー・ライ氏、でっち上げの国安法違反で有罪に

蘋果日報創刊者への残酷な処遇、基本的人権と報道の自由への侮辱

香港で2020年7月1日付の「蘋果日報」を手に持つ黎智英(ジミー・ライ)氏。 © 2020 Vincent Yu/AP Photo

(ニューヨーク)―香港高等法院が、廃刊となった日刊紙・蘋果日報(リンゴ日報)の創刊者である黎智英(ジミー・ライ)氏に下した有罪判決は、香港が報道の自由を尊重する姿勢からメディアへの露骨な敵意へと劇的に転換した最新の証左だと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。政府は根拠のない有罪判決を取り消し、直ちに黎氏を釈放すべきだ。

2025年12月15日、高等法院は黎氏(78)に対し、過酷な香港国家安全維持法に基づく「外国勢力との共謀」の2件、および刑事罪行条例(Crimes Ordinance)に基づく「扇動的出版物の共謀」の1件で有罪判決を下した。黎氏には終身刑が宣告される恐れがある。

「黎氏は5年にわたり独房監禁された後、でっち上げの罪で有罪判決を受けた。これは残酷な行為であり、司法による茶番劇だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長エレイン・ピアソンは述べた。「中国政府が黎氏を残酷に扱うのは、共産党を批判する勇気を持つすべての人々を黙らせるためだ。」

裁判所は、黎氏が上記3つの容疑で陰謀の「首謀者」であると認定した。判決は黎氏が他人と共謀し「外国勢力との結託」を実行したと指摘。その手法として「国際ロビー活動」への参加や、黎氏の記事、トーク番組、メディアインタビューを通じて外国政府に中国政府に対する「制裁・封鎖その他の敵対的行動」を促すことなどを挙げた。

裁判所はさらに、海外で中国・香港当局への制裁を求める活動を展開したアドボカシー団体Stand with Hong Kong(重光団隊)と黎氏が共謀したと認定した。

扇動罪に関しては、検察側は『蘋果日報』紙の161本の記事(うち33本は黎氏が執筆)が当局への不信感と憎悪を助長する内容であり、扇動的出版物に該当すると主張した。裁判所は検察側の主張を認め、黎氏が中国と香港政府の「正当性を損う目的で、個人的影響力を利用して継続的なキャンペーンを展開した」と認定した。

表現の自由の権利を行使した者を起訴することは、市民的及び政治的権利に関する国際規約に違反する。同規約は香港の事実上の憲法である基本法を通じて香港の法的枠組みに組み込まれ、人権法案条例に明文化されている。香港の国家安全保障体制はこうした人権保障の規範と相容れないものだ。

同事件で元『蘋果日報』幹部と編集者6人は既に同様の容疑で有罪を認めている。情状酌量の審理が2026年1月12日に行われ、その後に量刑が言い渡される予定だ。香港国家安全維持法第29条によれば、「重大な性質」の「外国勢力との共謀」で有罪となった者は10年から終身刑、その他の者は3年から10年の刑に処される。刑事罪行条例における「煽動罪」の最高刑は2年の刑だ。

黎氏の起訴過程では、公正な裁判を受ける権利に対する複数の重大な違反が認められた。具体的には、香港政府が選任した裁判官による審理、陪審裁判の拒否、長期の未決勾留、被告人が自薦した法的代理人の選任拒否などが挙げられる。2023年、高等法院は英国人弁護士ティモシー・オーウェンが黎氏の代理人を務めることを禁じた政府の決定を支持した。当局はまた、英国籍の黎氏に対し英国が求めた領事による面会を認めなかった。これは中国も加盟するウィーン領事関係条約に違反する行為だ。

黎氏は既に「詐欺」及び「無許可集会への参加」の罪で5年9ヶ月の刑期を服役中だ。糖尿病を患っており、2020年12月以降、拷問の一形態である長期の独居拘禁状態に置かれている。家族は心疾患があり、身体機能の衰えの兆候が出ているなど健康状態の悪化について繰り返し懸念を表明している。

2020年6月に中国政府が香港に香港国家安全維持法を施行して以来、少なくとも14の独立系メディアが廃刊となった。代表的なのが『蘋果日報』(2021年6月)と『立場新聞』(2021年12月)だ。両紙は大きな影響力を持っていたが、国家安全保障上の容疑で警察による大規模な家宅捜索と編集者らの逮捕が行われ、廃刊を余儀なくされた。

2024年8月には、『立場新聞』のジャーナリスト2名が刑事罪行条例の下、「扇動」で有罪判決を受けた。香港政府はまた、香港記者協会やジャーナリストに根拠がない形で遡及的に税金を請求するなど何度も嫌がらせをしている。

「各国政府は、黎智英氏の裁判という茶番劇に対し、香港当局に訴訟撤回と黎氏の即時釈放を迫るべきだ」と、前出のピアソン局長は述べた。「中国政府と香港政府は、香港の報道を封じ込めようとする執拗な努力の代償を支払うべきである。」

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